函館の農村にて「生産現場と食卓のつながりを五感で味わう」ツアー体験【前編】

こんにちは、ワールドエッグス函館オフィスの山口です!

今回は、ひょんなきっかけから「Hakodate Nature Gastronomy 2025」というモニターツアーイベントに参加させていただきました。その体験を少しだけご紹介しようと思います。

このツアーは、豊かな食文化と自然資源を誇る函館市が舞台。普段の観光ではなかなか訪れない農村エリアで、「生産の現場と食卓のつながりを、五感で味わう2日間」をテーマに、自然・食・人とのふれあいを通して“本質的な豊かさ”を感じることができる特別な企画です。企画・運営は、弊社ともご縁のある株式会社さとゆめさんと函館市が手がけています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000050855.html

みなさんの知る「函館の夜景」の反対側、通称「裏夜景」の夕焼けバージョンと葡萄畑

結論から言うと――最高!!!

目も、頭も、心も、そしてお腹も大満足。私の文章力が足りなすぎることが悔やまれます。ぜひ足りないであろう部分は「函館市グリーンツーリズム」さんのInstagramから感じ取ってみてください。もしくは次回ご自身で体験してみてください!
https://www.instagram.com/hakodate_greentourism/

そして…冒頭でもうひとつだけお詫びを。

後編に続きますが、とあるアクシデントにより、一部の記録(写真データ)が函館の大自然の中に帰ってしまいました…。そのため、2日目のレポートは少しあっさりめです。ごめんなさい。(頑張ったんだけどなぁ…)

2日目の内容をもっと詳しく知りたい、写真をもっと見せろ、という方は、ぜひインスタで…(泣)

とあるアクシデントのヒント

――しかし、大事なのは、記録より記憶だと思うんです!

※仕事上やブログ的には違います

1日目

函館空港から、ツアーがスタート!

ツアーの始まりは函館空港から。
今回は、函館市や北海道外からの参加者を想定しているそうです。
特にこの「Hakodate Nature Gastronomy 2025」のターゲットは、“一度は函館を訪れたことがある人”。

どうしたら2回目、3回目と足を運んでもらえるか。
さらには「また来たい」から「ここに住みたい」へ――。
そんなテーマを掲げ、あえて“THE・観光地”には行かない行程になっているのが特徴です。

高い期待感と共に函館山方面へ

とはいえ、“基本行かない”というだけで、理由があれば例外も。
今回の唯一のイレギュラーは、函館山の麓にあるフレンチレストラン「maison FUJIYA」。
この素敵な場所が、最初の目的地でした。

“ガストロノミー”の名にふさわしい体験

その名の通り、このツアーのメインテーマは「食」。
函館の自然と食文化の関係を、“学び・味わい・楽しむ”という三拍子で体験します。

もちろん、函館といえばご当地バーガーの「ラッキーピエロ」も良いですが、
今回の趣旨には、こうしたレストランでの本格的な体験がぴったり。
スタッフの方々が、料理や食材について丁寧に説明してくれます。

私も飲食を軽くかじっていたことがあるのですが、飲食体験として大事なのは情報(=ストーリー)です。
私がいた場所では「知らないものは売れないよ」と言われており、
売りたいのならば、その商品のことを知ることが大事と教えていました。
さらに言い換えると、情報があれば売れるのです。それだけ情報には価値があるということです。

攻めのメニューに感じた“自信”

さて、席に着くとまず驚くのが「maison FUJIYA」のコースメニュー。

お品書きに並んでいたのは――

  • イカ
  • くりりんカボチャ
  • カスベ イカスミ
  • ブリ
  • 大麦豚
  • デザート・ミニャルディーズ

……ほう。わからん。

食材名だけのシンプルなお品書き。
しかしそれこそが、彼らの“自信”の表れだと感じました。
「しっかりと説明しますよ☆」という意気込みが、文字から伝わってきます。

情報だけではなく、体験としての価値

「詳しい解説を!」と思った方、残念でした。
付け焼刃程度の情報量とそもそもの私の力量ではそんなことできません(という言い訳)。

でもそれこそが、この体験の本質なのだと思います。
簡単に語れないからこそ、現地で感じる価値がある。
情報ではなく“体験そのもの”が心に残る――まさにガストロノミー。

函館を訪れた際は、ぜひ「maison FUJIYA」に足を運んでみてください。
きっと、五感がよろこぶ時間を味わえるはずです。

一部だけ写真と一緒にご提供します。

「イカ」・・・イカの街と言われるイカを使った料理。最近はずっと不漁でしたが、今年はいきなりイカが戻ってきてびっくり。そんな食材を燻製スモーク、容器を開けた瞬間にモクモクしちゃって、フレンチっぽさ炸裂。
「カスベ イカスミ」・・・カスベとはエイのこと。北海道では意外と身近な魚種。エイヒレはみなさんも食べますよね?サクサクの球体の中には、エイのほほ肉が入っている。香辛料も効き、下部にあるイカスミのソースも含め臭みは無く、とても美味しい。お気に入り。

「ブリ」・・・イカが取れなくなってから、函館ではブリが大量に取れていました。ブリの食文化がないので、どのように食べるかもわからず、当初は市内ではほぼほぼ食べられていませんでした。ワールドエッグスも関わる「海のごちそうプロジェクト」の頑張りもあり、毎年、ブリが学校給食にも出るように。

2軒目(?)は、酒蔵へ。

お腹も満たされたところで、次の目的地は……酒です。
向かったのは、2021年に54年ぶりに函館市に誕生した酒蔵「五稜乃蔵」。

函館の居酒屋に行けば、だいたいどこでも見かける人気の日本酒。
そのおいしさの秘密を、杜氏の森糸(もりいと)さんに直接うかがいました。

レトロオシャレな外観。中にはお土産屋さんもあります。

技術と手仕事の融合「五稜乃蔵」

五稜乃蔵は、函館工業高等専門学校と連携し、蔵の中には「醸造ラボ」という最新鋭の研究設備を備えています。
一方で、お話を聞くと、驚くほど“手づくり”にこだわっているとのこと。
仕込みの数をむやみに増やさず、「できる範囲で品質を極める」姿勢を大切にしているそうです。

酒蔵内「函館高専 醸造ラボ」の入口の看板は「理科教室」(建物は廃校を利活用している)
ブクブクと発酵する米と水

日本酒づくりで最も大切なのは、やはり“水と米”。
お米は、蔵の近くで栽培されている地元産を使用しているとのこと。
そしてこのお米を育てている若き生産者・日向さん(通称ヒナティー)には、翌日お会いすることになっています。

こだわりの「水」は、まさかの…

そして気になるのが「水」。
てっきり井戸を掘っているのかと思いきや、使っているのは近くの浄水場の水(≒水道水)だそうです。

当初は井戸を掘る計画もあったそうですが、函館は掘ればどこでも温泉が出る土地柄。
温泉のせいで酒造りに使えず、断念したとのこと。

とはいえ、函館の水道は侮れません。
横浜に次いで2番目の近代水道として誕生し、日本最初の日本人設計の上水道でもあります。また、自然豊かな土地ゆえか、函館の水道水は昔から「おいしい」と評判で、実際に改めて飲んでも納得の味でした。

(私も函館で育った身として、水道水には信頼があり、がぶがぶ飲んで育ちました。海外に行っても、つい水道水を飲んでしまいます…!)

仕込み水が美味しい!!

4種類の「五稜」を飲み比べ!

そんなこだわりの詰まった日本酒「五稜」を、贅沢に4種類飲み比べ。
ここでも杜氏の森糸さんの贅沢な解説が付き、味わいは更に増幅します。

左から、「ワイン酵母仕込み -Goryo Wine Yeast-」、「五稜 特別純米 白」、「五稜 純米大吟醸35%」、「五稜 純米」

簡単な感想になりますが…

「ワイン酵母仕込み」はまさに“ワインと日本酒の融合”という味わい。
チーズなどワインに合うおつまみが恋しくなる一本です。

「白」は軽やかで、割っても楽しめそうな飲みやすさ。
日本酒の新しい可能性を感じました。(カクテルとか試してみたい)

「純米大吟醸35%」はやはり削ってるだけあって甘い!
良い日本酒感が出ています。

…どれも個性的でおいしかったのですが、参加者みんなの一致した意見は
――「純米」が一番!

この「五稜 純米」を派生させていった他のバリエーションはもちろん美味しいですが、
そもそものポテンシャルが高い日本酒で、シンプルに美味しい。
森糸さんも「自分が毎日飲みたいから、つい力が入っちゃう」と笑っていました。
ちなみにこの「五稜 純米」は、熱燗が一番おすすめだそうです。

函館の米と水でつくられた日本酒を味わっていると、函館の食べ物のことが脳裏に浮かびます。やはり、函館の味がその米と水から伝わってきたからなのか、酔っていたからなのかは覚えていませんが…。
覚えているのは、少し口が寂しくなってきて、次の“夕食タイム”への期待の高まりでした――。

日本酒の後は…もちろん、ワインだよね…?

次の目的地は、フランス・ブルゴーニュに300年の歴史を持つ家族経営ワイナリー「ドメーヌ・ド・モンティーユ(Domaine de Montille)」が、函館に開いたブドウ園&ワイナリー。

――その名も「ド・モンティーユ&北海道」

2019年からブドウ栽培をスタートし、2023年にはついにワイナリーも竣工。
まだ生産量は限られており、本格稼働前とのことですが、すでに“新しいもの好き”な函館人の間では話題になっていて、私自身も今回の訪問をとても楽しみにしていました。

人里離れた山の上に構えたブドウ園とオシャレな施設
中はワインを作る施設とレストラン部分で分かれている
デッキの手すりにいたカメムシもオシャレに見えませんか

ブドウ畑から感じる、ワインづくりの鼓動

現地では、ジェネラルマネージャーの矢野さんの案内で、まずはワイナリーとブドウ園の見学へ。
どんな機械でどのように醸造しているのか、樽へのこだわりなど、丁寧に教えていただきました。

建物の地下の部分にすべてが集約。ちょうど作業後だったので簡単な解説をいただく。

ブドウ園では実際に房を採って、ピノ・ノワールとシャルドネを試食。
どちらも想像していたより甘く、そのまま食べても満足できそうなほど。
それでも「まだ甘さが足りない」とのこと。

“これだけおいしいのなら鳥も狙うよな…”と、初めて鳥に共感できました。

ピノ・ノワールの試食
シャルドネも美味しい
毎日ブドウを食べて、この景色をみるだけの暮らしがしたい

座学で深まる、ワインと土地のストーリー

建物に戻ると、次はワインセミナーの時間。
「ド・モンティーユ&北海道」がこの地を選んだ理由、ピノ・ノワールやシャルドネを函館で育てる難しさ、気候との向き合い方など――
矢野さんから、たっぷりと想いを伺いました。

テーブルには、シャルドネのグラスワイン。
そんな話を伺いながら、飲むワインがまた美味しい。

セミナーの一コマ。一日を通して、見え隠れするキーワード「人」と「水」。答え合わせは後ほど。

夜景とワインで締めくくる、贅沢な1日

セミナーのあとは、矢野さんもご一緒に、併設レストランでディナータイムへ。
窓の外には、函館の“裏夜景”。
一日の締めくくりにふさわしい、穏やかで贅沢な時間でした。

情報と食、そしてお酒にどっぷり浸かった1日。
「知る」と「味わう」が重なることで、体験はより深く、豊かになる。
情報が入ると、美味しい。楽しい。そして、好きになる。

一度きりの訪問では終わらない、“また来たくなる理由”が詰まった、そんな一日目でした。

ワインのラベルデザインの秘密を語る矢野さん。これを知ると、来年のラベルが楽しみ。

後編へ続く。