体験で学ぶ溺れのリアル

島津斉明です。海のそなえプロジェクトを担当しています。
このプロジェクトでは、毎年発生し続けている水難事故を何とか減少させるために、改めて調査を行いながら、新たな視点での対策や情報発信に取り組んでいます。
この日は今年の施策の目玉の一つである、カヌー・スラロームセンターでの教育プログラムに参加してきました。
カヌー・スラロームセンターは東京オリンピックの際の会場として整備された施設で、ポンプを使って人工的に、海や川など流れのある環境を再現できます。
つまり、安全を確保しながら自然の中で起こる流れを体験し、溺れたときの対処を身体で学ぶことができるのです。
簡単なレクチャーと、ライフジャケットを着て浮くことになれるプログラムが終わったら、早速川の流れを体験します!


まずは川の流れに逆らってみましょう……ということですが、これがまず逆らえたものではありません。「子供の時に水泳やってました」程度では、進まない進まない。
その後はラッコのポーズ(頭を上流に向けて手を開き、つま先が浮くぐらいの感じで漂う)で流され、長いものやロープにつかまって陸に戻るという内容になりますが、複雑な水流に乗っているとなかなか思うような方向に進めません。安定した陸上から投げられたロープや棒を掴むと岸に寄っていけるのは、仕組みがわかっていても不思議な感覚でした。
次いで、流れる川を直線に泳いで渡るプログラム。考えてみれば当たり前ですが、まっすぐ泳ぐと下流に曲がってしまうので、流れに向かって斜めに泳ぎます。
流れの速さに応じて少しずつ角度や泳ぐ勢いを変えるコツなどは、体験しないとわからないなあと思いました。


そして、海で起こる離岸流の対処を知るプログラム。
離岸流というのは、海岸から沖に向かって起こる流れのことです。最大で秒速2mもの速さになり、水難事故の大きな要因になっています。
今回は落水を想定して背中から水中に入り、1回目は離岸流に流されてみる、2回目は離岸流に対して真横にイカ泳ぎという泳ぎ方で抜ける、3回目は離岸流に対抗して泳いでみるという3パターンを体験しました。
秒速2m。かなりの速さです。これが体験だとわかっているので冷静に対処できましたが、何も知らず海でこんな流れに乗ってしまったら、パニックになってしまうでしょう。川もそうですが、流されてしまったときにはいかに長時間耐えられるかが勝負なので、必死にならずむしろゆったり泳ぐという点が、目から鱗でした。
自分は普段、「体験をすれば、すべてわかる」という考え方には懐疑的で、たった1回の体験ですべてが理解できたつもりになってしまうのは学ぶ側の怠慢だよなと思ってしまうのですが、今回のプログラムでは逆に「体験をしなければ、わからないことがある」ということを強く感じました。
海のそなえプロジェクトの担当になってもうすぐ1年が経とうとしていますが、まだまだ自分は現場を体験したり見たりすることから学ぶことが多いなあと感じています。水難事故を減らすという大きな目標に向けては小さな課題がまだまだたくさんありますが、それらを潰していくためには、まず自分自身が主体となって体験し、活動し、発信していくことが大事だなあと、改めて思った1日でした。
▼カヌー・スラロームセンターでのプログラムは、まだ申込可能です! よろしければぜひこちらのリンクから!
https://uminosonae.uminohi.jp/news/20250612.html


