船で行く愛媛県の鹿島で開催「海のそなえ体験」

みなさま、こんにちは。
海のそなえプロジェクトのゆうたです。
このプロジェクトでは、毎年発生し続けている水難事故を何とか減少させるために、改めて調査を行いながら、新たな視点での対策や情報発信に取り組んでいます。
今回は、7月21日の海の日に愛媛県の松山・北条・中合併20周年を記念する「北条鹿島にぎわいまつり」で開催された「海のそなえ体験」の視察レポートをお届けします。
海を楽しむために知っておくべきこと、水難事故に遭わないための知識を学び、それを実際の海で「経験」に落とし込む今回のプログラムの様子をご覧ください。
舞台は、鹿が暮らす自然豊かな島「鹿島」
舞台となったのが、松山市北条の沖合約400mに浮かぶ周囲1.5kmほどの小島「鹿島」です。
渡船でわずか3分ほどで行くことができ、島には海水浴場、キャンプ場、そして周囲の島々を一望できる展望台などがあり、手軽に渡れる自然豊かなレジャースポットです。
また、「鹿島」の名前の通り島には鹿(ニホンジカ)がいます。渡船には鹿のオブジェがついており、島に降り立つと可愛い鹿たちが出迎えてくれます。


現在、およそ40頭の鹿が島内に2箇所ある鹿園で暮らしています。ただ、過去の大雨で1頭がこの鹿園から逃げ出し、今も島のどこかで暮らしているということです。
当日は「北条鹿島にぎわいまつり」も開催され、多くの家族連れで賑わっていたこの鹿島で、海のそなえプロジェクト愛媛事務局(南海放送)が主催する「海のそなえ体験」が行われました。
「海のそなえ体験」は、海に入る前から始まっていた
「海のそなえ体験」は、愛媛県内の小・中学生を対象に座学と海での体験を組み合わせたプログラムとなっており、午前の部と午後の部の2回開催されました。午前の部は事前申し込みの段階で定員に達し、その人気ぶりからも、愛媛県民の安全への意識の高さがうかがえます。
この「海のそなえ体験」の講師は、海のそなえプロジェクトではお馴染み、子どもたちに大人気の「イカおやじ」こと水難救済会の江口圭三さん(常務理事)です。
江口さんは鹿島に到着するやいなや周囲の海の状態を確認し、会場となる海水浴場へ向かいました。海水浴場に着くと江口さんはためらうことなくどんどんと海に入っていき、気をつけの姿勢のままスーッと水面に浮き始めました。
・・・
・・・
・・・
微動だにせず、見ているこちらが少し不安になるほど、静かに海と一体化していました。
微動だにしない江口さんが何をしているかわかりますか?


ようやく海から顔を上げた江口さんが発した言葉は
「午前中の体験は、マリンシューズ必須だな」
この日は昼頃が干潮で、体験を行う時間はさらに潮位が下がります。江口さんは、潮位を考慮し体験が行われる時間の海底が砂ではなく石や海藻で覆われていることを確認し、裸足では危険なこと、さらに水温や波の様子から、その日のコンディションに合わせた座学と海での体験の時間配分を組み立てていました。
「海のそなえ体験」は、この瞬間から、もう始まっていたのです。
その他にも江口さんは、一見すると安全そうな場所にも危険が潜んでいることを教えてくれました。
例えば、このような緩やかなコンクリートのスロープです。段差が緩やかなので、警戒なく歩いたり走ったりと油断しがちですが、海に近いほど苔が生えて滑りやすく、転倒して頭を打つ危険があります。
実際に江口さんが指摘したあと、まさにこの場所でイベントスタッフの方が足を滑らせて転倒し、出血する場面がありました。幸い大事には至りませんでしたが、海辺ではビーチサンダルではなく、滑りにくいマリンシューズがいかに重要かを改めて痛感させられました。
知識が「自分ごと」に変わる「海のそなえ体験」

当日は、朝9時前には30度を超える暑さとなり、日中の最高気温は松山で33.6度を記録しました。受付では冷たいスポーツドリンクや塩分チャージタブレットが配られ、看護師も待機しており、熱中症対策や体験中のアクシデントへのそなえもしっかりしていました。


座学は、屋根があり風通しの良い場所で行われました。
海や川に入る前の心得からどのような危険が潜んでいるかその場所はどこかを「海坊主」や「河童」の話を交えながら子どもたちと一緒に考えながら学んでいきます。はじめは緊張がみられた子どもたちも話が進むにつれ積極的に手を挙げて、自分が見つけた危険な場所を教えてくれました。
子どもたちはもちろん、一緒に参加されている保護者の方々が真剣な表情で頷いていたのがとても印象的でした。
座学の後は、いよいよ海での体験です。
子どもたちは、動きやすいウェットスーツ、小さい子どもはその上からライフジャケットを着用して海に向かいます。目的地に向かう途中で、海水浴場の危険箇所の確認をして座学で学んだことの確認を行いました。子どもたちに、ただ「危ないよ」と教えるのではなく、なぜ危ないのか、どのような危険が潜んでいるのかを丁寧に伝える江口さんの説明を聞いて、子どもたちは納得した表情を見せていました。
学んだことをすぐに現場で確認できるのは、実際の海水浴場で行うからこそできることです。
鹿島海水浴場は、堤防に守られていて波は非常に穏やかでした。しかし、海の水は思ったよりも冷たく、子どもたちは驚きながらも一歩ずつ海に入っていきました。海に入ると気持ちよさそうに海での呼吸、浮き方、泳ぎ方を体験していました。
ウェットスーツやライフジャケットを身につけていることや学校のプールとは違う環境に戸惑いながらも、次第に水に体を預け、浮くことや泳ぐことの楽しさを実感しているようでした。この慣れない時間を講師の方々に安全にサポートしてもらうことで、子どもたちの不安も解消されやすかったのではないかと思います。みんな楽しそうに海で体験していました。
松山海上保安部の心強いサポート体制
さらに今回の「海のそなえ体験」には、松山海上保安部の方々もサポートとして参加していました。座学と海での体験を直接サポートしてくれただけでなく、海での体験中は沖合で海上保安部のゴムボートが待機し、参加者の安全を見守ってくれていました。
子どもたちがボートに向かって手を振ると、保安官の方々が手を振ってくれて、子どもたちは大喜びです。
この心強いサポート体制は、海と日本プロジェクト愛媛事務局(南海放送)、水難救済会、松山海上保安部の官民の垣根を越えた「水難事故をなくしたい」という強い思いを感じました。


おわりに
今回の「海のそなえ体験」では、子どもたちに「危険だから遊んではダメ」と禁止するのではなく、「海や川のどこに危険が潜んでいるか」を自ら認識し、「安全に楽しめる範囲」を自分で判断する力を養うことができるプログラムでした。
その学びの場に子どもたちだけでなく、保護者の方々も真剣な眼差しで安全への理解を深めていたことが印象的でした。
学んだ知識をすぐに実際の海で体験することで、子どもたちには着実に経験として定着していったように思います。体験後、「ライフジャケットがあって安心した」「泳ぐのは難しかったけど楽しかった!」という声が聞かれたように、楽しい思い出と共に、海や川と安全に向き合う意識が芽生えたのではないでしょうか。
今回の「海のそなえ教室」は、親子で海や川の安全を考える素晴らしい機会となりました。この学びを一過性のイベントで終わらせず、子どもたちの意欲にあった継続的な取り組みにしていく必要があると感じました。
楽しそうに海で学ぶ子どもたちの姿を見て、安全に楽しむ仲間がこうして増えていけば、水難事故はきっと減らせるはずだと、希望を感じた一日でした。

